宙と生活

ACIDMAN大木伸夫インタビュー「曲を作り始めると宇宙に結びついて、僕にはそれしか歌えないことに気づいた」

【宙と生活編集部】

“生命”や“宇宙”をテーマにした壮大な詩世界と様々なジャンルの音楽を取り込み、幅広いサウンドで3ピースバンドの可能性を広げ続けるロックバンド「ACIDMAN」。

「ACIDMAN」のフロントマンである大木伸夫氏は、ライブMC中にも自身の宇宙論や素粒子物理学の話を展開するなど、「大木伸夫の宇宙好き」はロックファンの間でもかなり有名。

今回は「宙フェス2019」のトークショー出演が決まった大木伸夫氏に独占インタビュー。彼が音楽を生み出す上で欠かせないと語る「宇宙」をテーマにじっくりとお話をお聞きしました!


宇宙に果てが無いことを知り、宇宙に取りつかれた。

――編集部(以下、編):この度は「宙フェス2019」の宙トークにご出演を頂きありがとうございます。

ファンの方々にも、大木伸夫さんの宇宙好きはかなり有名なようですが、宇宙が好きになったきっかけなどはあるんでしょうか?

大木伸夫(以下、大木)小学校の低学年の時に、父親に「宇宙には果てがないんだよ」と教えてもらって…その時からですね。宇宙に取りつかれたのは。

「宇宙には果てがない」ことを知る瞬間は、子どもの頃に誰でも一度は経験すると思うんですけど、それを知って怖くなる人もいるし、眠れなくなる人もいる。でも僕は知りたくてたまらなくなった。果てがない宇宙という存在が大好きになって、一体そこはどうなっているんだろう…と考えることが楽しくて。

宇宙の話をすると、「想像できないし、考えると怖くなるから考えたくない」って言う人もいます。不思議を感じる事って自分の存在が危うくなるし、不安定になるので、嫌な気持ちになったり不安になったりするのかもしれませんが、僕は「もっと知りたい!」という気持ちが強く湧き上がってきた。
「この世界の仕組みを誰か教えてくれ!」っていう感じが、子どものころから今もずっと続いているんです。

――編:子どもの頃に芽生えた好奇心をずっと育んでいらっしゃるんですね。
科学者などでなく、ミュージシャンになられたのはどういう流れですか?

大木:今は音楽を使って宇宙を表現していますけど、これはたまたまの流れで…。バンドを始めた時は普通に「女の子にモテたい」「カッコよくなりたい」みたいな気持ちで音楽をはじめたんです、笑。だから音楽で宇宙を表現するなんて、最初は考えてもみなかった。

でも曲を作り始めると結局は宇宙と結びついて、僕にはそれしか歌えないってことに気づいたんです。僕の曲は男女の恋愛を歌った甘いラブソングじゃないし、こんなマニアックなテーマが誰かの心に届いているのは、ちょっと奇跡みたいだなって思っています。

編:「ACIDMAN」の曲で宇宙が好きになったと言う方も多いですね。

大木:僕らの曲を聴いてくれている人達が、僕の宇宙好きを理解して受け入れてくれているのはありがたいしうれしいですね。でもライブのMCで、すごいマニアックな宇宙の話をしちゃって、みんなを置いてきぼりにしてしまうことはあるんです、笑。

最近、「ある証明」というコミュニティサイトを立ち上げたのですが、これは専門家でもないのに大勘違い野郎と思われるかもしれませんが…僕の「宇宙講座」もあったりして。ライブのMCでは、5分とか10分で話しきれないことが多くて、言いたいことを要約しすぎて急に変なところへ話が行っちゃうことがある。本当は1時間あれば、もっと宇宙の話をわかりやすく伝えられるのに…と。そこで、新しいことに挑戦するコミュニティサイトを立ち上げました。

編:新しいコミュニティサイトもとても興味深いです!
2010年にリリースされた「ALMA」では、実際にチリのアルマ展望台で撮影されたアルバムジャケットやMVが圧巻ですが、どのような経緯でこの曲は生まれたのでしょうか?

大木:アルマ展望台が建設予定の時、たまたま深夜のテレビ番組でその特集を見かけたのですが、完成予定図がすごくカッコよくて。「ALMA」はスペイン語で魂という意味があるらしいのですが、言葉が印象的だったのでメモしていたんです。ちょうどその時作っていた曲のタイトルに「ALMA」がぴったりだったので、曲のタイトルにしたいと考えました。

そこで国立天文台の方にも確認して使用許可をお願いしたところOKしてくださって「撮影もぜひ協力したい」と言ってくださったのです。

――編:実際に行かれてみて、いかがでしたか?

大木:本当にすごかったです。僕は星座を憶えたりはしないので、ただ星空を見上げて「スゲー!」っていう風に見るだけなんですけど、アルマの電波望遠鏡がある場所は標高5000mの高山で、とにかく圧巻でした。そこに向かうまでの飛行機から見た星空もまるで宇宙にいるかのようでしたね!

編:うらやましいです、天文ファンなら一度は行きたい憧れの場所です!

大木:そこからボリビアのウユニ塩湖へも行ったんですが、そこは全く光がなく360度真っ暗で、そこで見た星空も一生忘れられないです。恐怖すら感じるくらいの闇の中に、天の川がぐーっとせり上がっているのが見えて、ガスの濃淡が肉眼でもわかるくらいでした。

その空と対面した時に、「生きているんだ」という気持ちと共に「申し訳ない」という気持ちが同時に湧き上がってきた。

その気持ちは、こんなに世界は美しくて素晴らしい場所なのに、それを忘れて考えることといえば、自分の欲望のこと、自分の人生のこと、そんなことばかり。わがままになってしまう。そして気づけば争いあって、戦争を起こして。それを思うと懺悔したいような…自然への畏怖の感情と共に、反省の気持ちが湧き上がってきたんです。

最初はスタッフと一緒で撮影も、というような流れだったのですが、少しだけ一人にしてくれってお願いして…。一人でそこで大号泣したんです、そのくらい心に響く景色でした。風景を見て涙したことなんて、僕もそれ1度きりの体験です。

大木自身が撮影したウユニ塩湖の星空

編:自然と向かい合うことで、宇宙だけでなく内なる自分自身と対面されたんでしょうか…すごい経験ですね!

大木:ウユニ塩湖のような特別な場所でなくても、美しい星空を見ることは地球の美しさ、地球の命の大きさをリアルに感じ取ることだと思います。何もしないで星を見る夜を1年に1度くらいは作って、自分のエゴや私利私欲を忘れて素直な気持ちで星空と向かい合うのはとてもいいことじゃないかと思いますね。

わからないことだらけの宇宙にある確かなこと。

編:大木さんにとって宇宙をテーマに曲を作るということはどういう意味やメッセージががあるのでしょうか?

大木:僕はライブMCのたびにダークマターの話をしていて…それで会場のみんながきょとんとしちゃうんですけど、笑。

ダークマター、ダークエネルギーというものが宇宙にあって、宇宙の96%がダークマター、ダークエネルギーでできているってことを聞いた時に、もうすごくショックで。僕らが触れているもの、食べているもの、この体…すべてがその残りのたった4%しか分かっていない。僕らの理解している世界なんてたった4%で、残りの96%は謎に包まれている。おまけにたった4%が我々のすべてなのに、その物質を構成する素粒子だって、実はわからないことが多すぎる。本当はミクロにもマクロにも謎がいっぱいなんです。

そんな風にわからないことだらけの宇宙の中にある確かなことが、自分が生きていることの実感や、愛する人への気持ちやぬくもりじゃないかと思うんです。
だけど本当の意味で愛を歌うのはとても難しいし、実は日常の中では愛の存在を感じづらい。宇宙を感じたり、存在している命の不思議を感じることで、逆に愛や自分が存在することの確かさを実感できる気がします。

死を感じるからこそ生を感じる、その儚さや瞬間のきらめきを僕は歌いたいし、伝えたいから宇宙をテーマに歌を歌うのかもしれません。

編:2017年にリリースされたアルバム「Λ」(ラムダ)に収録されているインスト曲「Λ-CDM」(ラムダ・シーディーエム)は、曲のタイトルもずばり「ラムダ・コールド・ダークマター・モデル」の略語からきていますね。

大木:この曲はまさに「ダークマター」をテーマに生まれました。ダークマターという根源的な生命体に対して迫ってもらえたらいいなと。宇宙の残り96%に満たされているものは何なのか…、それは虚無やネガティブなものではないと僕は考えています。

僕は人の愛とか感情と、宇宙の虚無的なものとはリンクしていると思っているんです。人が思う愛ではなくて、エネルギーのような形で存在してすべてを受け入れているんじゃないかと。そしてそれがダークマターの一部であったら素晴らしいなと思います。愛って人間とか生物にしかないと思いがちですけど、もっといろんなものに愛情というようなものがあって、それが宇宙の命の素みたいな感じじゃないかな。

この曲は、コードでいうとずっとマイナー進行ですが、最後はメジャーになって曲がすごく開けていく。そこで聞いている人にも解放されて救われてほしい。

大きな何かに結局は守られていたんだ、これでいいんだ…っていう肯定感を感じてもらいたい。最後はすべてが肯定的なものになるために、ネガティブさえも生まれてきていると思っているんです。「許し」とかそういうことでなく、善や悪もなく「すべてがそこにあった」というような「祈り」のようなイメージで作った曲で、ぜひ一度聞いてみてほしいです。

Λ-CDM(instrumental)が収録されているアルバム「Λ」

大木伸夫がオススメする宙カルチャー。

――編:最後に大木さんオススメの宙カルチャーをぜひご紹介ください!

●SF小説「星を継ぐもの」ジェイムズ・P・ホーガン著
大木:読んだのはずいぶん前ですが、実際にこういうことが起こってもおかしくないと思うんです。
SF小説には、宇宙のどこかに地球外知的生命体がいるに違いない、地球は僕たちが最初の文明でないのではないか?といった発想が昔からありますが、この小説は非常に科学的にも計算されてリアリティがある。
今読んでも古びていないし、しかも漫画もあるので、本が嫌いな方は漫画で楽しめます。本のタイトルもお洒落ですよね。

●映画「インターステラー」
大木:これを上回るSF映画はもうここ10年くらいはないんじゃないかというくらい感動しました。アイデアも素晴らしいし、でもテーマは家族愛で、家族の愛がしっかりと描かれていて、せつなくて。この映画は監督クリストファー・ノーランのオリジナルなんですけど、物理的に愛が表現されているのが新しいし、深いテーマがある映画です。

●音楽「Λ-CDM」(ラムダ・シーディーエム)(ACIDMAN)
大木:そして最後はさきほどもお話した「ACIDMAN」の「Λ-CDM」です。
音楽って、宇宙を表現するのに一番ぴったりな手段じゃないかと。もちろん映画も素晴らしいし、小説も素晴らしいのですが、音楽は「響き」だけで一瞬にして言葉にできない感覚に連れていけるんです。

僕は科学者のようなアプローチで宇宙の秘密に迫れないけれど、宇宙と響きあい共鳴することはできる。本当は科学者にめちゃくちゃ憧れますけど、笑。
だけど登っている山は同じだなって思うんです、登り方が違うというだけで。

ーー編:素敵な宙カルチャーのオススメをありがとうございます。特に小説「星を継ぐもの」は私も大好きな本だったのでとても感動です!
宙フェスでの宇宙トークを今から本当に楽しみにしております、当日もどうぞよろしくお願いいたします。

大木:こちらこそ楽しみにしています、よろしくお願いします!

大木伸夫さんの宙トーク出演は、「宙フェス2019」京都嵐山 法輪寺会場にて、10/13(日)となります。どうぞお楽しみに!

END

大木伸夫(ACIDMAN)

大木伸夫(Vo&G)、佐藤雅俊(B)、浦山一悟 (Dr)からなる“生命”“宇宙”をテーマにした壮大な詩世界、様々なジャンルの音楽を取り込み、“静”と”動”を行き来する幅広いサウンドで3ピースの可能性を広げ続けるロックバンド。
2002年アルバム『創』でメジャーデビューを果たし、以降、数々のロックフェスの大トリを務める。2017年には結成20周年の集大成として故郷埼玉県、さいたまスーパーアリーナにて初の主催ロックフェスである「SAITAMA ROCK FESTIVAL “SAI”」を開催し、チケットは即日ソールドアウト。現在までに11枚のオリジナルアルバムを発表し、6度の日本武道館ライブを開催し成功を収めている。
2019年10月30日には、メジャーデビューアルバム「創」のアナログ盤をリリースし、それを記念した“再現”ツアー「ACIDMAN LIVE TOUR “創、再現”」の開催を控えている。

オフィシャルサイト:http://acidman.jp/


テキスト&写真:宙と生活編集部